2007.10.12 (Fri)

伊坂幸太郎:グラスホッパー 

3人の殺し屋と一人の復讐に生きる男の物語。
殺すことに何のためらいももたず、ナイフで一家皆殺しを請け負う蝉。
相手を見つめるだけで自殺させてしまう、ちょっと特殊な”自殺させ屋”の鯨。
裏の業界でもかなり珍しい押し屋の男。

二人の殺し屋、蝉と鯨、そして復讐に生きる平凡な男の鈴木。
この3人を中心に話が展開していきます。

この作品でも伊坂幸太郎の腕がしっかり活きています。
登場人物の中で、明らかに”非常識”な力を持つ鯨が、違和感なく溶け込んでいます。
また、ホームレスの一人が話した”とある本”のこととか、ゴダールとかも出てきます。(ちょっとだけ)


ジャンプ読書の人は、この本のタイトルにぴんと来たかもしれません。
ただいま連載中の魔王に出てくる世直し集団?と同じ名前です。
そして魔王に出てくる殺し屋の蝉と岩西の人物設定が全く同じです。
岩西がよく口にするジャッククリスピンの話とか、もう全く一緒です。

実は魔王の原作は伊坂幸太郎なのです。
魔王とグラスホッパーは全く違う話ですが、蝉と岩西をそのまま登場させたり、
グラスホッパーという名前を使う辺り、伊坂幸太郎の遊び心が感じられます。

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2007.09.02 (Sun)

小野不由美:魔性の子 

小野不由美の代表作と言える十二国記を思い出しました。

高里の周りで起こる謎の事故の原因が徐々に明らかになるが、事故の規模もまた徐々に大きなものへとなっていきます。
後半、クライマックスにかけて、一気に全ての謎が明らかにされていきますが、結局、高里がなぜ戻ってきたのかはわからず終いなのが少し残念でした。

十二国記を彷彿とさせる単語がたくさん出てきますが、細かい部分で違うところもあります。

魔性の子では、“あちらの世界”はともていいところとして描写されています。
また、舞台が“こちらの世界”のためか、詳しい説明も省かれています。

十二国記を読んだ事がある人なら、探し物をする女と同級生が暴動を起こした時の高里の行動から、彼の正体に気づくと思います。

あちらの世界の背景について多少分かっていないと、ちょっと物足りない感じが残るかもしれません。
消化不良のようなもやもや感が・・・。


十二国記が読みたくなる。そんな一冊でした。
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2007.08.26 (Sun)

石田衣良:4TEEN【フォーティーン】 

中学2年生の14歳の少年達の物語。
ウェルナー症候群のナオト、頭が良いチームの頭脳であるジュン、でかくて太った元気のいいダイ、語り手となっている平凡な少年のテツロー。

池袋ウエストゲートパークのような軽快なテンポの短編集です。
出合った様々な出来事を通して成長していく彼らの姿はいつまでも見ていたくなります。

病気のナオトや家庭に問題を抱えているダイだけど、深刻な事情を軽く抑え、ストーリーに軽い刺激を与えるスパイスになっています。
ただ、ちょっと軽すぎる気がしないでもないですね。
短編だから仕方がないかもしれませんが、彼らの背景から滲み出る影のようなものが全くありません。
彼らの深刻な事情に焦点をあてた長編作品もおもしろそうに感じました。
EDIT |  22:44 |  書籍  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.08.10 (Fri)

石田衣良:スローグッドバイ 

恋愛短編集です。

男と女の出会いと別れ。石田衣良があとがきで“ちょっと甘口でもいいから、読み終わったあとで心地よい酔いを残すようなラブストーリーにしたい”と言っている通りの作品となっています。

胸が熱くなるほどの感動、自然と零れてしまう涙、そういった感情が揺さぶられるような物語ではないけれど、心にストンと落ち着くような、ほんのりと甘みの効いた素晴らしい作品です。

夢を追いかける恋人の安全ネットでいようと心に決めた男の揺れ動く心を描いた<夢のキャッチャー。
曜子がそのまま高い空に飛び立ってしまったら。空を自由に飛べる鳥に安全ネットは必要なのだろうか。
そしてついに空へ羽ばたき始めた鳥を見て、史郎は自分の役目が終わったことを悟る・・・。

おせっかいな友人から紹介された女性と付き合うフリを始めるフリフリ
恋人同士のフリを続ける二人だったが、その原因となったものがなくなってしまうことになり・・・。

10の短編のなかでも、この2作品が特に好きです。
活字が苦手な人でも1篇25ページほどの短さなので読みやすくお勧めです。
表題となっているスローグッドバイが個人的にはちょっとイマイチな感じだったのが残念でした。
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2007.08.07 (Tue)

宮部みゆき:鳩笛草 

超能力を持つ3人の女性をめぐる3つの物語。
その内の1つは長編のクロスファイアに登場する青木淳子の短編です。

特異な能力を持ったために特異な悩みを抱えて生きる“普通の”人達。
彼女達に与えられた力は常識を超えるものだが、それを受止める器である彼女達は普通でしかない。

他人の心を読むことのできる本田貴子はその能力を活かすべく刑事となる。
しかし彼女の能力は徐々に衰えていき、自分の刑事としての資質を疑い始める。
もし能力がなくなった時、自分は刑事としてやっていけるのだろうか・・・。

念じたものを発火させる能力を持つ青木淳子。
残念ながら彼女はほとんど出てこないものの、“一丁の銃”として生きる彼女の放つ圧倒的な存在感は物語の端々に見られる。
彼女が去った後に点けられていた思い出のキャンドルは、彼女の決意だろうか、それとも一丁の銃として生きることしかできない哀しさだろうか。

麻生智子は祖母の遺品を整理しているうちに大量のビデオテープを見つける。
押入れの奥にまるで隠すかのように仕舞われていた謎のテープ。
そこには怖い夢の話をする自分の姿が撮られていた。
椅子に座って話す自分の姿だけが・・・。
テープを調べていくうちに判明していく失われた能力・・・。


宮部みゆきの超能力者の物語は、特異な力を持ってしまった故の悩みを鋭く描いている。
彼女達は特異な力を持ってしまったという共通の悩みを抱えながらも、それぞれ別の道を歩んでいる。

鳩笛草が表題となっているものの、個人的には朽ちてゆくまでの方が未来があって好きな作品。
鳩笛草で大木の期待に答えてあげないポンちゃんは、人はそう単純ではない。という事なのかもしれない。物語としてはポンちゃんが期待に答えて仲良くめでたし!となって欲しいところだけど、この終わり方の方がリアリティはあるように思う。
彼女は悩みながらも進むべき道を見つけるが、事件を解決したいと願う彼女の姿は立派な刑事に見える。
彼女はやっぱり刑事なのだ。
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